知念実希人さんは小説家でありながらお医者さんでもある方です。
なので、小説の中に医療用語が出てきたり病院が舞台であることも多々あります。
知念実希人さんの作品は最初はバラバラであったいくつかの出来事をきれいにまとめてとても納得感のある作品を書かれている印象です。
作品の中には最後に暖かい気持ちになるハートフルミステリーもありミステリーにハードルを感じている初心者の方にもおすすめしやすい作家さんです。
おすすめ作品
死神シリーズ
- 優しい死神の飼い方
死後の魂を道案内する神様に近い存在である「私」がゴールデンレトリーバーの姿に憑依し地上に降り立ちます。
降り立った地にはホスピスがあり、過去の悩みを抱え成仏できなさそうな患者を見つけます。
そんな患者の悩みを解決し最後に大きな事件を解決していく物語です。
最初は過去に裏切られた女性の誤解を解いたり、自分のある家族のために描いた絵が別の人が所有していた謎を解いたりと患者ごとの過去を解決していく短編集のような形になります。
ですが、最終的には過去の事件がすべて1つにつながり解決に向かっていきます。
最後は大切な人との死に立ち会い、出会いと別れの辛さを味わえるハートフルミステリーとなっています。
話の内容、構成ともにきれいにまとまった作品です。
- 黒猫の小夜曲
小夜曲と書いてセレナーデと読みます。
優しい死神の飼い方で主人公であった「私」にアドバイスをした「同僚」がいましたが、その「同僚」が今回の主人公になります。
ここではこの「同僚」を「僕」とします。
内容は道案内を担当していた「僕」が黒猫に憑依するところからスタートします。
そこでは成仏されずに漂っている魂と出会います。
その魂は近くで交通事故に会った女性に憑依し1人と1匹で魂の成仏に向かうことになります。
解決する内容は交通事故に遭い妻に最後の言葉を伝えられなかった男性や事件解決の手前で病に倒れてしまった刑事の無念を晴らすといったものがあります。
このように1つ1つの魂を成仏していくことで大元の事件の解決につながっていきます。
本作は『死神の優しい飼い方』のハートフルをを踏襲しつつミステリー要素が各段にあがっています。
各話の関連性や犯人の意外性など読破後は完成度の高さに感心してしまいました。
単発作品
- レゾンデートル
知念実希人さんのデビュー作です。
レゾンデートルはフランス語で「存在理由」という意味です。
末期癌を宣告され自暴自棄になっていた医者の雄貴は不良から暴行を受けます。
暴行の復讐で不良を殺害した雄貴は連続殺人鬼「J」に犯行を見つかってしまいます。
「J」に脅され連続殺人の共犯となった雄貴は、殺人の帰りにヤクザに襲われている少女沙耶を助けます。
「J」の正体とヤクザが沙耶を狙う2つの事件が同時並行に進む中で余命数か月の雄貴が事件の解決と沙耶の幸せのために自分の命を賭けて「存在理由」を証明していく話です。
中盤の最後にでてくる「残りの時間すべてを使って沙耶を守り幸せにする。それが『岬雄貴』という一人の人間の最後の存在理由となった。」という場面から事件解決までは駆け足で読み進めてしまいます。
サイコキラーとの戦いの最後に待つ感動を是非味わってほしいです。
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